Drama
21 to 35 years old
2000 to 5000 words
Japanese
気がつくと、見慣れない白い天井が僕の目に映った。ここはどこだ…? いや、分かっている。死後の世界だ。
僕の名前はショウ。享年不詳。と言っても、もう肉体はない。転生することも叶わず、僕は療養所と呼ばれる場所に案内された。生前とほとんど変わらない、病院のような場所だ。
(ここは…生きている時と何も変わらないじゃないか。)
生前からの孤独感は、死後の世界でも僕を蝕み続けた。頭痛、腹痛、軽い下痢…いつもどこか調子が悪かった。僕はそれを理由に、療養所の個室に引き籠った。
生きている時も辛かったが、死後の世界にも死後の世界の苦しみがあることを知った。それは、死にたくても死ねないという残酷な現実。
「こんにちは、ショウさん。少しお話しませんか?」成香は、いつも笑顔を絶やさない、明るい女性だった。
(誰だ…? どうせまた、適当に慰めるだけだろう。)
最初は彼女を拒絶していた僕だが、彼女の優しさに触れるうちに、少しずつ心を開き始めた。
「ショウさん、もう8年もここに引き籠っているんですって? もったいないわ。」
「そんなことないわ! あなたは生きているだけで、誰かの希望になるかもしれない。」
彼女の言葉は、僕の心に小さく火を灯した。それでも、僕はまだ過去から逃れることができなかった。
「ショウさん、あなたの死因は何だったんですか?」成香が静かに僕に尋ねた。
その言葉に、僕は凍り付いた。死因…それは、僕が最も触れたくない記憶だった。
(思い出したくない…。思い出すと、またあの苦しみが…。)
「無理に話さなくても大丈夫ですよ。でも、もし話せる日が来たら、私はいつでもあなたのそばにいます。」
それからしばらくして、僕は少しずつ過去を語り始めた。話すうちに、僕は自分がなぜ死んだのか、ゆっくりと思い出した。
(僕は…妻の虐待に耐えかねて、焼身自殺をしたんだ。)
「息子を残して…なんてことをしてしまったんだ。僕は、なんて愚かなんだ。」
成香は、僕の話を静かに聞いていた。そして、僕の手を優しく握った。
「辛かったですね。でも、あなたはもう一人じゃない。私が、そばにいます。」
それから、僕は少しずつ変わっていった。彼女と一緒に療養所の外に出かけたり、他の人たちと話をしたりするようになった。
(少しずつ…自分を受け入れられるようになってきたかもしれない。)
ある日、僕は療養所の庭で、一人の青年と出会った。 青年の名前はケンタロウと言い、僕と同じように過去に苦しみを抱えていた。
「 僕も、かつてはあなたと同じように、絶望の中にいました。でも、今は少しずつ前を向けるようになっています。」
「本当ですか? 僕には、まだ希望が見えないんです。」
「時間はかかるかもしれませんが、あなたならきっと大丈夫です。 僕がそうだったように。」
僕と成香は、ケンタロウを療養所の中に誘い、彼を仲間として迎え入れた。
そんなある日、僕は現世の様子を見ることができる装置を見つけた。
画面には、大人になった息子の姿が映っていた。彼はやつれ果てて、生きる希望を失っているように見えた。
しかし、僕の声は息子に届かなかった。 次の瞬間、息子はビルの屋上から身を投げた。
僕はその光景を目の当たりにし、深い絶望に打ちひしがれた。
「ごめん…。でも、僕にはもう、生きる意味が見つけられなかった。」
僕は息子を抱きしめ、泣き崩れた。 成香もまた、涙を流していた。
しばらくして、僕は心を落ち着かせ、息子に語りかけた。
「ケンタロウ、お前はもう一人じゃない。私がいる。成香もいる。 三人で、やり直そう。」
僕たちは三人で、手を繋ぎ、前を見据えた。死後の世界で、新たな人生を始めるために。
成香が微笑んだ。「さあ、ショウ、ケンタロウ。新しい冒険の始まりよ。」
そうして、僕たちの来世の物語が始まった。 愛と再生の物語が…。